近年,炭素材料は水素貯蔵材料として有望であると言われていますが,水素の吸着メカニズムについてはまだ十分な理解には至っていません. 我々は,単層グラファイト(グラフェン)表面における水素分子吸着の有無をシミュレーションにより調べました(図1). 水素分子がグラフェン表面に近づくにつれて,波動関数で表わされた電子(緑と赤の分布)が水素分子側からグラフェン表面に移動し,ついには一方の水素原子の電子が奪われている様子がわかります. その結果,一方の水素原子はグラフェン表面に吸着するとともに,もう一方の水素原子は脱離することがわかります.[1,2]
図1 グラフェン表面で水素分子が解離吸着する様子
リチウムイオン電池や燃料電池は世界をリードする技術として目覚ましい発展を続けています. 我々は,そのような電池に着目し,電極や電解質膜さらにはその界面で起こる現象をミクロスケールで解明しようと試みています. 我々のモデルでは,従来の流体モデルをさらに微視的に捉え,キャリヤイオンの粒子的な振舞いに着目しています.[3]
図2 リチウムイオン電池のモデル
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図3 プロトン流動の模式図
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[1] Kentaro DOI, Ikumi ONISHI, and Satoyuki KAWANO, Ab initio Molecular Dynamics of H2 Dissociative Adsorption on Graphene Surfaces, Computer Modeling in Engineering & Sciences, Vol. 77, No. 2 (2011), pp. 113-136.
[2] Kentaro DOI, Ikumi ONISHI, and Satoyuki KAWANO, Dissociative Adsorption of H2 Molecules on Steric Graphene Surface: Ab Initio MD Study based on DFT, Computational and Theoretical Chemistry, Vol. 994 (2012), pp. 54-64.
[3] Satoyuki KAWANO and Futoshi NISHIMURA, Numerical Analysis of Discharge
Characteristics in Lithium Ion Batteries Using Multiphase Fluids Model,
Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 44, No. 6A (2005), pp. 4218-4228.