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大阪大学基礎工学研究科機能創成専攻機能デザイン領域 川野研究室

非定常イオン電流の分子論的究明

マイクロ・ナノ流路中の分子流動を制御することによる一分子観察が注目されていますが,そのような狭小空間におけるイオン電流の起源についても興味深い研究対象となっています. 我々は,分子スケールの理論モデルを構築することにより,現象の解明を試みています.
図1は,ナノギャップ電極を用いた微弱電流の検出メカニズムを説明するための電気回路モデルです.[1] 液体中を電気泳動する微粒子がナノギャップに到達するときに閉回路となり電流が流れます. 過渡応答の時定数と電気回路を比較することにより,電極,微粒子および溶液の関係を考察することができます.

図1  ナノギャップ電極による微粒子検出[1]

図2は,電子が微小電極間にある塩基分子に衝突しながら移動し,やがて定常電流に至る機構を調べるためのシミュレーションです. これにより,電流電圧特性を解析することができるとともに,実測値との比較が可能になります. 本解析結果は,実験値として得られる各塩基分子のコンダクタンスの違いをよく説明します.[2]

図2  一分子の電流電圧特性の解析[2]

さらに,電解質溶液中にある電極に電圧を印加した直後のイオン電流応答についても理論的に説明ができるようになりました. 図3は,実験に用いた電極のイメージ図と電極表面におけるイオンの応答をモデル化した結果です. 電圧を印加直後に電極表面でイオンの数密度が急激に上昇し,その後に緩やかに減衰する様子がわかります.[3] これにより,溶液内部におけるイオンの非定常な振る舞いの詳細が説明されます.

図3  イオン電流計測に用いられる微小電極のイメージ図(左図)と電圧印加直後の電極表面におけるイオンの数密度変化(右図)[3]

[1] Kentaro DOI, Masahiro UEDA, and Satoyuki KAWANO, Theoretical Model of Nanoparticle Detection Mechanism in Microchannel with Gating Probe Electrodes, Journal Computational Science and Technology, Vol. 5, No. 2 (2011), pp. 78-88.
[2] Kentaro DOI, Yuki NISHIOKA, and Satoyuki KAWANO, Theoretical Study of Electric Current in DNA Base Molecules Trapped between Nanogap Electrodes, Computational and Theoretical Chemistry, Vol. 999 (2012), pp. 203-214.
[3] Kentaro DOI, Makusu TSUTSUI, Takahito OHSHIRO, Chih-Chun CHIEN, Michael ZWOLAK, Masateru TANIGUCHI, Tomoji KAWAI, Satoyuki KAWANO, and Massimiliano Di VENTRA, Nonequilibrium Ionic Response of Biased Mechanically Controllable Break Junction (MCBJ) Electrodes, The Journal of Physical Chemistry C, Vol. 118 (2014), pp. 3758-3765.

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