光ピンセット技術は,非接触・高分解能でのマイクロ・ナノ物質の操作を可能にします[1]. なかでも,軌道角運動量を持ったレーザー光は光渦とよばれており,光マニピュレーションに利用する研究が進んでいます. Gaussianビームを螺旋位相板やホログラムを用いて位相変調させることによってLaguerre Gaussianビームが得られます. Laguerre Gaussianビームの中心部には軌道角運動量を持つ光渦が存在するため,一般的にこのビームを光渦として用います.
図1 螺旋位相板による光渦生成の概要図
Laguerre Gaussianビームをマイクロ・ナノ流体デバイス中に分散させた微小粒子に照射することで粒子は図2のような公転運動を始めます. 粒子の流体中での公転運動を解析することで[2, 3],樹脂への軌道角運動量の転写や電気的粒子識別などの光渦を用いた新たな応用研究を追求しています[4].
図2 マイクロ流体デバイス中における光渦による微細粒子の公転運動
さらに,電解質溶液中にある電極に電圧を印加した直後のイオン電流応答についても理論的に説明ができるようになりました. 具体的な応用例として,現在取り組んでいるのは,マイクロ・ナノダブルオリフィスを有する流路におけるマイクロ・ナノ粒子の検出・識別です. 流路に粒子分散液を導入し,光渦による1粒子制御によって電気力線の集中したオリフィス部に粒子を連続的に通過させます. これにより,光渦によって高いスループットを実現しながら粒子通過による電気信号データを得ることができます. 本研究室では得られたデータを解析し,粒子検出技術のさらなる発展に寄与することを目指しています.
図3 光渦を用いたマイクロ・ナノ粒子の電気的検出の概要図
[1] Fumika NITO, Tetsuya SHIOZAKI, Ryo NAGURA, Tetsuro TSUJI, Kentaro DOI, Chie HOSOKAWA, and Satoyuki KAWANO, Quantitative Evaluation of Optical Forces by Single Particle Tracking in Slit-like Microfluidic Channels, The Journal of Physical Chemistry C, Vol. 122 (2018), pp. 17963-17975.
[2] Ryoji NAKATSUKA, Tetsuro TSUJI, Tempei TSUJIMURA, Ryo NAGURA, Kentaro DOI, and Satoyuki KAWANO, In-plane Orbital Motion of Particles in Microchannels Induced by Optical Vortices, Optical Manipulation and Structured Materials Conference, Yokohama, Japan, April 22nd -26th (2019), pp.88-89.
[3] Tetsuro TSUJI, Ryoji NAKATSUKA, Kentaro DOI, and Satoyuki KAWANO, Effect of Hydrodynamic Inter-Particle Interaction on the Orbital Motion of Dielectric Nanoparticles Driven by an Optical Vortex. Nanoscale, 12(12), 6673-6690.
[4] Ryo NAGURA, Tempei TSUJIMURA, Tetsuro TSUJI, Kentaro DOI, and Satoyuki KAWANO, Coarse-Grained Particle Dynamics along Helical Orbit by an Optical Vortex Irradiated in Photocurable Resins, OSA Continuum, Vol. 2 (2019), No.2, pp. 400-415.