マイクロ・ナノ流路中の分子流動を制御することによる一分子観察が注目されていますが,そのような狭小空間におけるイオン電流の起源についても興味深い研究対象となっています.
我々は,分子スケールの理論モデルを構築することにより,現象の解明を試みています.
図1は,ナノギャップ電極を用いた微弱電流の検出メカニズムを説明するための電気回路モデルです.[1]
液体中を電気泳動する微粒子がナノギャップに到達するときに閉回路となり電流が流れます.
過渡応答の時定数と電気回路を比較することにより,電極,微粒子および溶液の関係を考察することができます.
図1 蛍光可視化観察によλDNA
図2は,電子が微小電極間にある塩基分子に衝突しながら移動し,やがて定常電流に至る機構を調べるためのシミュレーションです. これにより,電流電圧特性を解析することができるとともに,実測値との比較が可能になります. 本解析結果は,実験値として得られる各塩基分子のコンダクタンスの違いをよく説明します.[2]
図2 微小流路内のDNA流動
[1] S. Uehara, H. Shintaku, and S. Kawano, "Electrokinetic flow dynamics of weakly aggregated DNA confined in nanochannels", J. Fluids Eng., Vol. 133 (2011), pp. (121203-1)-(121203-8). DOI: 10.1115/1.4005343.